展覧会概要
「砂の城をつくること(あるいは壊すこと) Building a Castle of Sand (or Breaking It)」と題して、愛知県立芸術大学に関わりのある現代美術作家の作品を紹介する展覧会を、韓国・ソウルにて開催します。
名古屋市近郊に位置する愛知県立芸術大学は、1966年の設立以来、日本を代表する芸術総合大学のひとつとして重要な役割を果たしてきました。美術の分野では国際的に活躍する多くのアーティストを輩出しています。
今回の展覧会では、愛知県立芸術大学出身の作家、また現在同学にて教員として学生を指導している作家の作品を紹介します。これは、とかく東京発の情報に偏りがちな日本の現代アートの多様な側面を伝える現状報告としての意味を持つとともに、韓国と日本との間に美術を通じた新たな交流や情報交換のチャンネルを開くきっかけとなることも期待するものです。
今回紹介する4人の作家(倉地比沙支、大崎のぶゆき、白河ノリヨリ、栗原亜也子)には、愛知県立芸術大学に関わりがあるということ以外に、その表現における共通項を見ることができます。それは「現実の虚構性・目に見えるものの不確かさ」といった言葉で表すことができ、このグループ展のテーマを形成しています。彼らの作品においては、題材やテーマだけでなく、メディア・技法・素材の側面においても、虚実の関係性は重要なキーワードとして意識されています。絵画作品(白河)であれ、あるいは版画(倉地)であれ、あるいは写真や映像作品(栗原、大崎)であれ、視覚芸術には常に「幻像」というラベルがつきまとうことを、これらの作家たちは逆説として巧みに利用しているのです。
表面に現出しているもの、手に触れることのできるものの不確実性や幻影性を、本展では、「砂の城」という言葉に託しています。砂浜につくられた精巧な城を私たちは「城」と呼ぶことに違和感を覚えませんが、それは私たちの知覚や知識,想像力の助けによる認識にすぎません。もちろんそれは本物の城ではなく、あくまでも別の現実を写したコピー、イメージにすぎません。ここでは城を構成するひとつひとつの砂粒こそが「本物」なのですが、私たちは砂粒をこの目で見ることはできても、砂粒を砂の城の「実像」として把握することはないでしょう。
砂の城は、いずれは波に洗われて崩壊し、消滅してしまう運命にありますが、私たちを取り巻く現実もまたそのように流動的なものだと言えます。砂の存在に気付いたときには、そこにはすでに城は存在しない。私たちの現実認識とはとりもなおさず、砂の城を築いては壊し、またつくり直す、という終わりのない営みに他ならないのです。
4名の作家たちの作品は、砂の城をつくること(あるいは壊すこと)に含まれる大いなる矛盾と、同時にそこに見出すことのできる世界の豊穣を示唆してくれます。
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Next Door Gallery
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