展覧会概要
花や植物をモチーフに、日本の伝統絵画の空間構成を現代的な解釈で取り込んだ油彩画を制作する、
荻野夕奈の個展を開催いたします。
荻野夕奈は1982年東京生まれ、東京芸術大学油画科修士課程修了。在学中は映像作品を制作していましたが、近年は絵画を主なフィールドとし、身近な草木や花をモチーフに、色と形態による絵画表現の可能性を追究した作品制作を続けています。
日本画、特に琳派などの装飾的な伝統絵画からの影響は、作家自身が「日本の伝統的な模様や襖絵等に関心を持ち、フラットでありつつも油絵の特徴を生かして面と線、写実を組み合わせた独自の空間表現を模索している」と語るとおりです。
構成的で装飾的とも言える、日本画のフラットさを直截に想起させる作品から、花や木の具体的な形と、抽象的な線やパターンが同居する、より直感的で自由な描画の作品まで、荻野の作品は幅広く展開されています。そこには、画面上で視点の動揺・逍遥を誘う動的なダイナミックさ、重層的で複雑な空間性が通底して存在します。
塗りつぶし、汚し、上描き……静かで抑制された色彩の中に時折現れ、画面を分断したり覆い隠したりするランダムな線や色面は、ノイズのように強い存在感を主張し、描くこと本来の衝動性を垣間見せています。「映像的」(あるいは「図解的」)な絵画が主流となっている最近の日本の現代アートの状況において、「絵画的」な絵画のみが与えることのできる視覚体験、見ることの純粋な喜びを、荻野の描く作品は備えていると言えるでしょう。
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ギャラリーADO
熊本県熊本市河原町2