展覧会概要
HRDファインアート(京都)、Space O'NewWall(ソウル)の共同企画により、京都のギャラリーStudio KANにて、日本と韓国の現代美術の交流展「Paradise: Lost & Found - 追憶の楽園」を開催します。
出品作家は、韓国からチョ・ヘジュン、ダイ、イ・チャンジン、イ・ミヨン、パク・ソンワンの5名、日本から南條敏之、澤村武山、田中加織の3名、合計8名のアーティストによるグループ展となります。
チョ・ヘジュンは、自身の個人的な体験や家族史を起点に、絵画やインスタレーションから映像まで、幅広い媒体を用いた表現を提示します。戦争などの大きな歴史と個人との関わりを、ユーモアを交えて掘り下げる意欲的な取り組みを数多く行っています。
ダイは、祖母が語る過去の記憶の物語を出発点として、染色、木版画、陶器など、幅広い素材・媒体を用いた制作を展開しています。個人の記憶が共同体としての物語となり、それがさらに世代をまたぐことで寓意性を帯びた別の新たな物語へと転換されていきます。
イ・チャンジンは、一般社会や日常生活とアートとの関わりを思考の軸として、インスタレーション作品の制作・発表を行っています。近年では、骨董品店やリサイクルショップ、フリマアプリなどで集めた「伝統的な画題の風景画」を解体し、つなぎ合わせて再構築することで、時代の変化や美術史の恣意性を露わにする作品に取り組んでいます。
イ・ミヨンは、金箔や銀箔を使用し、エンボス(箔押し)のような効果を生み出す独自の技法を駆使して、韓国の伝統的建築やそのディテールを表現した作品を制作しています。様々な記憶や物語を孕んだ空間を画面に刻み込むことで、歴史の中の個人としての立ち位置を確かめるかのような作品です。
パク・ソンワンは、古典的な西洋油彩画の技法を用いながら、生まれ育った韓国・光州の市街や田園の風景を記録に留めるような作品を描き続けています。フランス印象派を彷彿とさせる色彩や光の表現の中に、時代とともに変容し失われていく韓国の暮らしや風物に対する愛惜の思いが滲み出ています。
南條敏之が日本各地の「海岸防砂林」を撮影した写真シリーズ《shelterbelt》は、日本の自然の象徴のように謳われている「白砂青松」が実は人間の作為の産物であることを暴露し、「伝統とは何か」「自然とは何か」という問いを静かに投げかけます。
澤村武山が描く郷里・熊本のごくありふれた田園風景や都市郊外の情景は、即物的・写実的でありながら、懐かしさや人の営みの温もりも感じられ、見る者の感情や記憶に訴えかけます。澤村の作品は、ほぼすべてが屋外において写生的な手法で制作されています。
田中加織は、京都の仏教寺院の庭園や東洋の伝統的な山水画をインスピレーションに、理想郷的な風景をポップなカラーと柔らかな描線で描き出します。田中の作品の基盤となるのは、「思い」を「かたち」にしようとする人間の意識への強い関心です。
展覧会タイトルの「Paradise: Lost & Found」は、旧約聖書の「失楽園」「楽園追放」を指す「Paradise Lost」に、駅などの遺失物取扱所(忘れ物センター)を指す「Lost & Found」を組み合わせた造語です。過去の記憶や歴史を美化しようとする私たちの抜きがたい意識に「楽園」のイメージを重ね、過去と現在に丁寧かつ執拗な眼差しを向けることによって人間性の本質を掬い上げ、掘り起こそうと試みる現代美術作家たちの姿勢を象徴する言葉として提起しています。
日韓8名の作家の作品を通じて、歴史と現代、伝統と変化、社会と個人など、「記憶」と「物語」を多様な角度から問い直す展覧会となります。
* * *
Studio KAN(スタジオ・カン)
https://studiokan.jp/